東京工業大学博物館

東京工業大学博物館(東京・大岡山)のnoteです。ここでは、展示品の解説や、刊行物など…

東京工業大学博物館

東京工業大学博物館(東京・大岡山)のnoteです。ここでは、展示品の解説や、刊行物などの情報を共有していきます。

マガジン

  • 展示解説

    東京工業大学博物館に展示中の収蔵品の解説を集めました。

  • 東工大の三大発明

    東京工業大学博物館に展示中の資料のうち、「東工大の三大発明」と称される研究に関する解説を集めました。 「東工大の三大発明」と呼ばれている研究成果には、水晶振動子に関する研究、フェライトに関する研究、ビタミンに関する研究があります。

  • 企画展示解説

    東京工業大学博物館の企画展示の解説を集めました。

  • 資史料館 とっておきメモ帳

    先端技術の開発だけではない、東工大の知られざる一面を紹介します。

  • 東工大と機械

    東京工業大学博物館に展示中の資料のうち、機械分野の研究・教育に関する解説を集めました。

記事一覧

ナノファイバーが創る地球環境 谷岡 明彦

はじめにナノファイバーとは、直径が1nmから1000nm(注1)、長さが直径の100倍以上の繊維状物質(毛髪(約Φ0.06 mm = 60 μm)の100分の1から1000分の1の太さを持つ超極…

戦地をくぐりぬけたボート部のメダル

東工大の端艇部(ボート部)はオリンピック選手を出しています 新学期が始まって間もない頃(2018.4.9)、博物館の事務室に電話がかかってきました。電話の主は岩野美惠子…

ビタミンB₂の工業的製造の研究 ー星野敏雄・佐藤徹雄

ビタミンB₂は、1879年A. W. Blyshにより牛乳黄色色素ラクトクロームとして報告された動物の成長促進因子のことです。現在では、フラビン酵素やフラビンアデニンジヌクレオ…

コガネムシの色鮮やかな体表を化学する -生物ナノマニュファクチャリングの不思議の世界  渡辺順次

はじめに 展示物①のコガネムシを眺めてみてください。まずはそのメタリックな色に目を奪われます。メタリック色とは反射光の強度が強いということです。また、見る方向を…

ナノファイバーが創る地球環境 谷岡 明彦

ナノファイバーが創る地球環境 谷岡 明彦

はじめにナノファイバーとは、直径が1nmから1000nm(注1)、長さが直径の100倍以上の繊維状物質(毛髪(約Φ0.06 mm = 60 μm)の100分の1から1000分の1の太さを持つ超極細繊維)です。ナノファーバーはアキレス腱、骨、遺伝子などのように身近に存在するものですが、工業的にも作ることができます。工業生産方法としては高電圧を使用するESD(Electro Spray Deposit

もっとみる
戦地をくぐりぬけたボート部のメダル

戦地をくぐりぬけたボート部のメダル

東工大の端艇部(ボート部)はオリンピック選手を出しています

新学期が始まって間もない頃(2018.4.9)、博物館の事務室に電話がかかってきました。電話の主は岩野美惠子さんという方で、お父様の遺品を整理していたら、生前とても大事にしていたメダルが出てきたので東工大に寄贈したいという申し出でした。博物館はノーベル賞以外のメダルの寄贈は受けない方針で来ていますので、「申し訳ありませんが、…」と断りか

もっとみる
ビタミンB₂の工業的製造の研究 ー星野敏雄・佐藤徹雄

ビタミンB₂の工業的製造の研究 ー星野敏雄・佐藤徹雄

ビタミンB₂は、1879年A. W. Blyshにより牛乳黄色色素ラクトクロームとして報告された動物の成長促進因子のことです。現在では、フラビン酵素やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の形で広く生体内の酸化還元反応に関与している事が知られている一種の補酵素です。その構造は、1936年P. Karrer及びR. Kuhnにより決定され、世界各国で合成研究が行われていました。

星野敏雄(189

もっとみる
コガネムシの色鮮やかな体表を化学する
-生物ナノマニュファクチャリングの不思議の世界
 渡辺順次

コガネムシの色鮮やかな体表を化学する -生物ナノマニュファクチャリングの不思議の世界  渡辺順次

はじめに
展示物①のコガネムシを眺めてみてください。まずはそのメタリックな色に目を奪われます。メタリック色とは反射光の強度が強いということです。また、見る方向を変えると色が変わることにもすぐに気が付くと思います。垂直方位から水平方位へ目を移すと色はブルー側にシフトします。これら二つの特徴のため、特定の波長の光を吸収して色付く染料とは異なり、ときおり神秘的なほど深く、美しく輝いて見えるのです。

もっとみる