東京工業大学博物館
生物の動きに発想を得たロボットの開発 —広瀬茂男
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生物の動きに発想を得たロボットの開発 —広瀬茂男

東京工業大学博物館

概要

広瀬茂男(1947年東京都生まれ)は、1971年、横浜国立大学工学部を卒業し、東京工業大学大学院の梅谷陽二研究室に進学しました。広瀬は、東工大の修士学生として研究を始めたとき、「ヘビは足が無いのになぜ前に進めるのか」を解明することに決めました。

まず初めに、ヘビの運動を文献で調査し、仮説を立て、蛇行運動の基礎運動方程式を誘導しました。そして実際の動きを調べるため、渋谷のヘビ料理屋でシマヘビを買い、ヘビの体に電極を刺して蛇行の形や筋肉の活動の様子を実験しました。その結果、1972年12月、ヘビ型ロボット索状能動体3号機(Active Cord Mechanism ACM−III)は完成しました。

ヘビロボットは、災害現場で狭い瓦礫の中に入っていく人命救助用ロボットや、小型化すればヘビのように体の中に入っていく胃カメラロボットや、とぐろを巻いた状態でロケットに載せて他の惑星を動き回る惑星探査ロボットになる可能性があります。

原子炉内の狭い通路を通過し、階段を昇降し床の配管を跨ぐなどが出来るロボットが、大型ヘビ型ロボット蛟龍2号機です。広瀬は、1976年山に登ったとき、ザトウグモを手にとって動きを観察しその巧みな歩行に感心し、歩くロボットの研究も始めました。歩行ロボットは激しい凹凸のある環境でも自在に動き回われ、3本以上の足で立つと荒地でも倒れずに作業できます。

1985年の筑波科学博の政府館に展示したロボットがTITANIVです。階段を足先のヒゲセンサで検出して昇り降りします。

NINJA-IIは、壁や天井を足先吸盤で吸着しながら登ることの出来る壁面移動ロボットです。壁から天井に吸着しながら移れます。

歩くだけでなく、足首を立てると車輪になりローラスケート推進ができるロボットが、脚車輪型移動ロボットRoller Walker‐IIです。平地では車輪の方が効率よく滑らかに動けます。

このように、広瀬研究室では、生物の動きに発想を得たいろいろなロボットを開発していました。

東工大では、引き続き、人道的地雷探知除去ロボット、レスキューロボット、高齢者アシストロボットなど多くのロボットの開発が進められています。

4足壁面移動ロボット「忍者Ⅰ,Ⅱ号機」

高さ1.8m 左右幅0.5m 厚み0.4m 本体質量45kg 1994年

ビルや高速道路の陸橋などの外壁の検査や塗装などは高所作業で危険であり、また足場を設置する必要があるため多大の費用を必要としている。NINJA-Ⅱはそのような高所の凹凸のある壁面や天井面での作業を自動化するために開発した4足壁面移動ロボットである。


NINJA-Ⅱの各脚は、胴体と脛部3本の直動型アクチュエータを設けた特有の機構で構成されている。この機構は壁面ロボットが壁面を垂直に上昇するという、もっともパワーが必要な動作時において,アクチュエータ駆動軸の発生パワーを出来るだけ相乗させて利用することで出力を高めようとする広瀬が提唱する「干渉駆動(装備しているアクチュエータを出来る限り全て有効に利用することでシステムとしての高出力化を計る駆動法)」の効果を最大限発揮させるためのものである。自然界には数十㎏の体重の4足動物で壁面を吸着移動できるものは存在しない。そのため4足で壁面歩行するための歩容(歩き方)は独自に解析しWallGait と呼ぶ特有の歩行法を発見している。また、壁面ではとても不可能と思われた動的バランスを取る動歩行や、床から壁、壁から天井、そして隣接する異なる壁の間の歩行移動も実現した。
 NINJA で使用した吸盤は,小型の吸盤とそれぞれの吸盤の動作を制御する弁機構からなるVM 吸盤であり、この吸盤の効果で凹凸や割れ目のある壁面でも空気漏れを生じない壁面吸着移動を実現した。NINJA-Ⅱによる壁面垂直上昇速度は約13cm/sec であった。

節体幹型移動ロボット「蛟龍2号機」

全長3.3m、各節高さ1.08m、幅0.48m、全質量約320kg 1989 年

原子炉内の点検用通路、火災現場、林間部などの狭隘な環境を動き回るには大きなボディのロボットは不向きであり,小さなロボットでは運べる物資に限界がある。しかし、多くの節が直列に連結されるヘビ型ロボットは、

1)すべての節が先頭節と同じ経路をたどるため狭い通路を移動できる、2)節相互をお互いに屈曲させたりスライドさせたりすれば体を能動的に曲げることが出来て階段昇降や障害物を接触せずに回避できる、3)バッテリーなど運ばなければならない装置が多くても,それらを各節に分散して運べば容易に搬送できる,などの特性を有する。

このような特性を発揮するロボットとして蛟龍2号機は製作された。KR-Ⅱの各円筒形ユニットには、節間を左右に振る、上下にスライドさせる、そして車輪を回転させる3つのモータ(自由度)が装備され、それらを直列に連結して構成されている。各ユニットは容易に分離して搬送でき、連結すると電気的にも接続される。光学式の力センサが車輪や垂直スライド軸に装備され、装備された姿勢センサと連動して凹凸面や階段で自重を分散して対地適応な推進を実現した。先端のマニピュレータは先端部の数節の動きも利用して大きな範囲で作業できるものとしている。制御用計算機、バッテリなどは内蔵され自律走行が可能である。これまで林の中で木立を縫っての移動や市街地の狭い街路の走行実験などに成功している。

4 足歩行機械 タイタン4 号機

脚長1.2m 全質量160kg 1985 年

「歩く」という移動方式は、車輪移動方式に比較するとはるかに多くのアクチュエータが必要であり,駆動系が重く制御も簡単ではない。しかし歩行機械は、脚接地点を地形に適応させつつ離散的に選択しながら移動できるため、
1)凸凹面を安定に移動でき,地表の障害物を非接触で乗り越えられる。
2)スリップで地表を痛めることなく全方向移動ができる。
3)凹凸面で安定な静止姿勢がとれ,また足の自由度を利用することで能動的な土台となり、積載したマニピュレータなどの作業を補助できる、などの特徴を有し用途によっては十分実用的である。


 我々は1976 年以降歩行機械の研究に取り組んでいる。なお、歩行機械の脚の本数は、静的安定歩行を可能とする最小脚数である4 脚を選択している。TITAN -IV は1985 年の筑波の科学博の政府館に展示され、半年の会期中に3 段の段差のある舞台を往復し続け合計約40km の距離を歩いたモデル。脚機構には新たに開発した3次元パンタグラフ機構を使用し、高い移動エネルギー効率と操作性の高さを実現している。名称はTokyo Institute of Technology の歩く乗物から。


 足先のヒゲセンサ、姿勢センサなどからの情報で階段を足探りで検出しながら対地適応的な静歩行を実現した。静止状態からクロール歩容、そして対角脚2脚で交互に歩くトロット歩容に自動的に歩容を切り替える速度40cm/sec 程度の動的歩行を行う静動融合歩容も実現した。この歩容では動的歩行になると対角支持脚線上にZMP(ゼロモーメントポイント)を乗せる左右揺動歩容を行っている。

索状動態3号機

全長2m 20 節 1972 年~ 1975 年

展示してあるのはシマヘビの運動解析の実験の後に開発したヘビ型ロボットである索状能動態(Active Cord Machanism) ACM Ⅲ。

ACM Ⅲは1972 年12 月26 日夜、広瀬によって、世界で初めて実際のヘビと同じ蛇行運動で推進することに成功したロボットである。移動速度は40cm/sec程度。各節には左右に屈曲運動を生成するキャスターが左右一対取り付けられ、体幹方向に滑りやすくなっている。そのため、先頭節のサーボアクチュエータに対して左右に正弦波的に屈曲させる指令値を入力し、その屈曲信号を一定の速度で後部節のサーボアクチュエータに連続的に伝え続けると、体幹全体は前から後ろに波を送る胴体の蛇行運動を始め、胴体部が体の方に滑りやすいためあたかも水が流れるように胴体は前方に蛇行をはじめる。この移動原理は水中で泳ぐウナギなどの運動を地上で行うものに対応している。
 蛇行推進以外にヘビロボットの体側にたくさんの触覚センサを取り付け狭い迷路内を推進する実験にも成功している。このヘビ型ロボットの成功のあと広瀬らは多くのヘビ型ロボットを製作している。2005 年の愛知万博では、 三次元的に動き回ることができ完全防水型で水陸両用のヘビ型ロボットACM-R5 を発表し世界を驚かせた。また震災時に倒壊した家屋の隙間に入り込み生存者の探索を行うヘビ型レスキューロボット蒼龍シリーズの開発にも発展させている。

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