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自然を読む ー広瀬 茂久

エッセイ 「自然を読む」

黒部川下流の農村(富山県)で育ちましたので、自然に恵まれ、夜は星がとてもきれいでした。小さい頃はミミズを集めてポケットに入れ、親を困らせていたそうです。10 まで数えるのがやっとの状態で小学校に上がりましたので、給食が楽しみで学校に通っていました。“鳴かず飛ばず” の状態が続きましたが、小学校 5 年生になったころに脳の理数系回路がつながった感じで、大きな変化が起きました。算数ができるようになるとともに、星空を見上げながら宇宙の深淵に惹かれるようになったのです。

中学や高校で高度な数式を習うようになるとその美しさに魅了され、ひょっとするとこの宇宙は一つの数式で記述できるのではないかと夢想するようになりました。ところが大学に入ってみると、周りに数学や物理を得意とする学生がたくさんいて、私には難解な概念でも、彼らには直感的に理解できるらしいことが分かり、宇宙方程式への道は私には向かないことを悟りました。そんなわけで、2 年次の学科所属では化学科を選びました。実験は好きでしたし、腕前にも多少の自信はありましたので、良い選択だったと思います。

化学科では、分析化学・無機化学・物理化学・有機化学・生物化学を学びましたが、私には生物化学が一番新鮮で、この分野なら一仕事できそうだと感じました。卒業研究で生物化学教室に所属する頃には、自分の仕事は「自然を読む」ことだと思うようになっていましたので、何の迷いもなく博士課程まで進み、さらに米国に渡って医学部でポスドクをしました。これが動物生理学への入口でした。ちょうど遺伝子工学が立ち上がった頃で、その技術を使えば「三流の研究者でも一流の仕事ができる」と言われたとおり、複雑な生命現象が分子レベルで次から次へと驚異的なスピードで明らかになっていきました。このような飛躍の時期に研究者生活を送ることができたことは幸運だったと思います。宇宙方程式の道を迂回しての動物生理学でしたが、幼い頃の「ミミズ遊び」(私自身は全く覚えていないのですが)に伏線があったのかもしれません。

図2

図1 双子座流星群 Photolibrary から

図3

図2 幼少時の家族写真(写真中央の子どもが広瀬先生)


今回紹介する研究者

図1

広瀬 茂久
東京工業大学名誉教授
動物生理学

経歴

1947 年 富山県生まれ
1970 年 東京工業大学理学部化学科卒業
1972 年 同大学院理工学研究科化学専攻修士課程修了
1975 年 同大学院理工学研究科化学専攻博士後期課程修了,
1975 年 理学博士
1976 年 ヴァンダービルト大学研究員
1980 年 筑波大学講師
1984 年 筑波大学助教授
1985 年 東京工業大学理学部教授
1990 年 同生命理工学部教授
2013 年 同定年退職,名誉教授
2013 年 同博物館資史料館部門長,特命教授

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