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展示解説

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東京工業大学博物館に展示中の収蔵品の解説を集めました。
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#化学

ビタミンB₂の工業的製造の研究 ー星野敏雄・佐藤徹雄

ビタミンB₂は、1879年A. W. Blyshにより牛乳黄色色素ラクトクロームとして報告された動物の成長促進因子のことです。現在では、フラビン酵素やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の形で広く生体内の酸化還元反応に関与している事が知られている一種の補酵素です。その構造は、1936年P. Karrer及びR. Kuhnにより決定され、世界各国で合成研究が行われていました。 星野敏雄(1899-1979)・佐藤徹雄 (1908-1968)両教授は、1942年から研究を始

化学工学科の創設 ー内田俊一

内田俊一(1895-1987)は、東京の京橋に生まれました。府立一中、第一高等学校を経て、1920(大正9)年7月東京帝国大学工学部応用化学科を卒業、同年9月臨時窒素研究所技師になりました。研究所では、小寺房治郎所長の下でアンモニア酸化による硝酸製造プロセスの工業化について研究を行い、白金代用触媒を使ってパイロットプラントづくりをしていました。 1929(昭和4)年、東京高等工業学校の大学昇格に際し、本学の附属工業専門部教授となり、同年5月から、米国MIT(マサチューセッツ

合成ゴム・合成繊維の開発 ー神原周

神原周(1906-1999)は、東京に生まれました。1930年早稲田大学理工学部応用化学科を卒業後、本学松井元太郎教授の助手となり、イオウの物性測定の研究に従事しました。特徴ある応用化学科を育てることを提唱し、自らゴム研究室を主宰していた田中芳雄教授(東京帝国大学教授兼任)に請われて、1934年、研究室を移りゴムの研究をはじめました。これを契機に、広く高分子科学の発展に貢献することになります。 第2次大戦中1, 3-二塩化プロパノール-2と四硫化ソーダから耐熱、耐油性にすぐ

ビタミンB₂の工業的製造の研究 ー星野敏雄・佐藤徹雄

ビタミンB₂は、1879年A. W. Blyshにより牛乳黄色色素ラクトクロームとして報告された動物の成長促進因子のことです。現在では、フラビン酵素やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の形で広く生体内の酸化還元反応に関与している事が知られている一種の補酵素です。その構造は、1936年P. Karrer及びR. Kuhnにより決定され、世界各国で合成研究が行われていました。 星野敏雄(1899-1979)・佐藤徹雄 (1908-1968)両教授は、

光イオン化・レーザー光化学の研究 ー田中郁三

田中郁三(1926-2015)は、1950年代、質量分析のイオン源に電子衝撃の代わりに真空紫外部の光を用いる光イオン化質量分析法と呼ばれる新しい方法を世界で初めて考案し、そこから真空紫外光化学という新領域を開拓しました。 全ての物質は分子からなり、分子はプラス電荷をもつ原子核と、マイナス電荷の電子から構成されています。この分子(M)にイオン化ポテンシャル(IP:各分子に固有な物理量)より大きな光エネルギー(hv)を与えると、分子に固有の光イオン化効率(n)で光イオン化が起こ