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博物学への憧れ ー亀井 宏行

エッセイ「博物学への憧れ」

私は子供の頃から博物学者になりたいと思っていました。昆虫や植物ばかりでなく、蛇をポケットに入れて遊んでいたり、トカゲの卵を探したり、建築現場では土層断面を眺めているのが好きな少年でした。考古学も大好きで、土器や石器も探したいとうろつきまわっていました。

大学では生物学科へ進もうと思いましたが、私のやりたい生物学は分子生物学ではないので、そんな分野を修めて卒業したとしても中学や高校の教師にしかなれないぞと進路指導の先生に言われ、それならと潰しがきく電子工学を選択しました。電子工学に進んだのですが、電子回路は好きになれず、自分探しのため他学科の講義なども覗きに行きました。そして博士課程の学生の頃には、自然科学の根本は観測から始まるということで、計測学を極めたいと思うようになりました。

何かを観測しようとしたらあらゆる分野の技術を総動員して観測法を考えるという総合科学としての計測学というものを確立したい。しかし、この考え方が当時の大学の先生方には理解してもらえません。それぞれの専門に特化しないと大学では生き残れないというのです。そうやって進むべく道を探っていた東工大助手時代、東工大で立ち上がっていた文理融合の研究グループ「製鉄史研究会」から、地下の遺跡を発掘しないで調査する手法の開発をしてみないかと声がかかり、一も二もなく飛びつきました。地下の抵抗率、磁化率、誘電率、弾性率、質量、温度など、測れるものはなんでも測ってみて、その分布形状からどんな遺 跡が存在するか推定するという、遺跡の科学捜査です。

遺跡探査の研究を始めた頃は、電気屋が考古学の世界にやってきて勝手なことを言っていると思われ、なかなか探査結果を信用してもらえませんでした。しかしある遺跡で、考古学者が判断できなかった遺構を、私が考古学の専門用語を使って解釈した結果が、発掘によって証明されるということが起こって以来、私も考古学者の仲間として認められるようになりました。少年時代からの趣味が役に立ちました。結局これが私の終身の研究テーマになり、総合科学としての考古学の確立を標榜するようになりました。


図3

図1 エジプトのハルガオアシスにて,誕生日会

図2

図2 アメリカでの探査風景


今回紹介する研究者

図1

亀井 宏行
東京工業大学名誉教授
遺跡探査,考古情報学

経歴

1954 年 愛知県生まれ
1976 年 東京工業大学工学部電子工学科卒業
1978 年 同大学院総合理工学研究科電子システム専攻
1978 年 修士課程修了
1981 年 同大学院総合理工学研究科電子システム専攻
1981 年 博士後期課程修了,工学博士
1981 年 同精密工学研究所助手
1989 年 千葉大学助教授
1994 年 東京工業大学大学院情報理工学研究科助教授
2002 年 同大学院学情報理工学研究科教授
2013 年 同博物館教授
2019 年 同定年退職,名誉教授

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